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辻整形外科クリニック PAINFUL LESION

TSUJI ORTHOPAEDIC INSTITUTE


臼蓋形成不全

 まず初めに臼蓋形成不全(DDH=Developmental Dysplasia of the Hip)についての説明ですが、上の股関節の写真の臼蓋という部分は一般的には大腿骨頭とうまく充分にかみ合わさって体重を受けていますが、この写真のように、骨盤の臼蓋という部位の骨形成が不良で小さいことを臼蓋形成不全といいます。臼蓋形成不全の原因としては、胎児が母体内で逆子であることが最も多く見受けられます。(臼蓋回転骨切り術 (RAO)という手術が必要となる臼蓋形成不全の患者さんの半数近くの方が逆子で、残りの半数強は正常位などです。) 赤ちゃんはおなかの中にいるときに正常位では頭が下で骨盤の中にはまっており足を自由に運動できるので、お母さんは赤ちゃんがおなかを上腹部で蹴るのがわかります。しかし逆子の状態では、赤ちゃんの足が骨盤の中にはまっており、赤ちゃんは自由に足を運動できなくなるので、骨盤内腔の限られたスペース内でしか運動できず、足が脱臼気味でも股関節の動かせる範囲は限定されており、この時、大腿骨頭で押さえつけられた臼蓋の発育が悪くなります。このため臼蓋形成不全へと進行しますが、股関節が完全に脱臼してしまった先天性股関節脱臼という状態になった場合と、脱臼気味だけど完全には脱臼していない亜脱臼という状態の場合と、脱臼はしていないけど臼蓋形成不全だけが認められる場合があります。日本では乳児の3ヶ月検診にて先天性股関節脱臼を発見し、リーメンビューゲル(独)とかパヴリックハーネス(英)というバンドを着けて治療することにより脱臼したまま成長するお子さんは減ってきましたが、脱臼または亜脱臼が治った後も、臼蓋形成不全が残存するのが一般的です。

このサイトでは臼蓋形成不全の説明・診断・経過・治療について以下の記載をしてあります。
 ◇臼蓋形成不全の説明
 ◇先天性股関節脱臼を伴う臼蓋形成不全の新生児・小児期の保存的治療
 ◇先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全の関係
 ◇先天性股関節脱臼の発生率
 ◇金沢市医師会ビデオライブラリー
 ◇二次性変形性股関節症◇ (別のページ)
 ◇急速破壊型股関節症◇ (別のページ)
 ◇臼蓋回転骨切り術 (RAO)◇ (別のページ)


先天性股関節脱臼を伴う臼蓋形成不全の新生児・小児期の保存的治療:左の写真は、セントポール市のジレット子供病院にいた時の症例で、先天性股関節脱臼がある場合で、上の写真の方より重症の患者さんの股関節のレントゲン写真の経時的変化を示すものです。脱臼している新生児期の赤ちゃんの治療ですが、生後3ヶ月の時点で先天性股関節脱臼が残存し、パヴリックハーネス(リーメンビューゲル)をつけても生後4ヶ月の時点で股関節は整復されていません。その後、ギプスで整復し、1歳の時点では股関節はうまく整復されていますが、臼蓋形成不全の残存を認めます。2歳でも臼蓋形成不全が強く、5歳の時点では骨頭の変形も始まっています。40歳代以降で、骨頭の変形の激しい患者さんをよく見かけますが、このような課程で骨頭の変形が始まっているのです。脱臼がパヴリックハーネス(リーメンビューゲル)でうまく整復されない場合や、1歳以降に股関節脱臼の治療を開始する場合は、オーバーヘッドトラクション・開排位持続牽引整復法という持続介達牽引によって整復を行うと、このような骨頭壊死(骨頭のペルテス様変化)の発生率を下げることができます。

先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全の関係:先天性股関節脱臼があるから臼蓋形成不全になるのか、臼蓋形成不全があるから股関節が脱臼するのかというニワトリと卵のような話ですが、一般的には、先天性股関節脱臼があるから臼蓋形成不全が進行すると考えられるようになって来ていますが、先に臼蓋形成不全があれば股関節脱臼が残存しやすいのはもちろんのことです。アメリカでは赤ちゃんが産まれると整形外科のレジデントが新生児の先天性股関節脱臼の検診に行きます。この時、100人に1人の新生児で股関節の脱臼を認めます。胎児の時点ではさらに多くの子供が母体内で脱臼していると思われますので、先天性股関節脱臼があるから臼蓋形成不全を発症していると思われます。臼蓋形成不全の患者さんの母親の骨盤のレントゲン写真を撮ってみると、母親にも臼蓋形成不全を認めることがよくあります。こんな場合には、お母さんと娘さんの顔がそっくりなことがあるように、骨盤の形も親子で似ているのでしょう、と私は患者さんに説明しています。すなわち遺伝的な骨盤の形が原因で、股関節脱臼が二次的に発症している方も多いと思われます。

先天性股関節脱臼の発生率:参考までに、100人に1人の脱臼するお子さんのその後の経過ですが、先天股脱が発見されたあとはオムツを股を広げるように当てるように指導すると、生後3ヶ月の時点で1000人に1人しか脱臼しなくなります。それでも脱臼する子供には、パヴリックハーネスを使用し、1年後には10000人に1人しか脱臼しなくなります。今では、生後1歳の時点で脱臼しているお子さんの数は、石川県で年間新規に1人、東京都で年間新規に10人程です。石川県で先天性股関節脱臼の3ヶ月検診が始まったのは1967年ですから、45歳以上の方の中には脱臼に気付かなかったままの方がそれ未満の年齢より多いので注意が必要です。

(臼蓋形成不全による二次性変形性股関節症と診断され、人工股関節手術の適応で人工股関節手術についてお知りになりたい方は、音声付きの金沢市医師会ビデオライブラリーをご覧下さい。ここクリックして、パスワードを入力し、左にあるカテゴリの上から11番目の整形外科の中にある、タイトル:「人工股関節手術について」の所をご覧下さい。(17分10秒))


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